古いブログから ~東日本大震災、体験記③

March 10, 2016

洋室のドアを開けた母が「ハっ!」と言ってフリーズした。「あーもうだめだ」とその場にへたりそうになった母に、「どうしたの?」と言って部屋を覗き込む。ピアノが倒れていた。まるで、草むらで大の字になって空を見上げる人に憧れて、仰向けになろうと試みた感じだ。

 

まだ見えないリビングの様子が気になった。父の部屋の電気は、よく旅館にあるような、天井からひもで吊るされているような種類の電気だった。激しい横揺れで、遊園地の海賊船アトラクションのように動き、電気が天井に打ちつけられたのだろう、丸い蛍光灯が割れて部屋の隅々まで破片が散らばっていた。この部屋にいたら、全身に蛍光灯の破片が刺さっていただろう。机の上に積まれていた書類が床を埋め尽くし、本棚のガラスが割れて奇妙な形になって残っていた。

私の部屋の隣にはトイレがある。トイレはそんなに物があるわけではないから、被害はないだろうと思っていたが、なんと水浸しだった。ドアの外まで水が漏れ出している。その時は電気がつかず、何の水か分からなかったのだが、トイレタンクの中に貯められていた水が飛び出したのだった。それほど激しい揺れだったのだろう。

さて、リビングはどうなっているんだと廊下のドアを開けようとするが開かない。ドアを開けると、左右の壁が収納棚になっているのだが、そのドアが開いてしまい、ドアが開けない。おまけに電気はつかないし、収納棚からミシンやら掃除機やら飛び出している。無理ドアを押すと、10cmほど開いた。そこから腕をつっこみ、ちらかってる物たちをとりあえず向こうへ押す。このドアが開かなければリビングにも到達できない。奇妙な体勢になり必死で床に落ちたものをかき分けた。そしてやっとドアが開く。



リビングには光がさしていた。勝手にベランダの扉が開き、風が入ってきていた。予想どおり、購入したばかりの平べったい液晶テレビが床に倒れていた。

ソファがリビングの真ん中を陣取り、テレビの映像によく映し出されるように時計が14:46を指したまま床に落ちていた。背が高い収納ケースが、壁に穴をあけて倒れていた。いったいどんな風にして、壁に穴を開けたのだろう。私の胸の高さくらいまである観葉植物のベジャミン君が力なく倒れていた。

リビングと和室はつづいているのだが、和室に置いてあった大きな箪笥のうち、一つが前にドンと倒れていた。箪笥は突っ張り棒で押さえて倒れないようにしていたのだが、突っ張り棒が天井にくっきり穴を開けていた。何もかもが倒れていた。笑えるほどだった。​



 キッチンにはまったく足を踏み入れられなかった。壊れた皿や鍋が散乱し、しょうゆ1本分と油一本分が床に流れ出し、カオスと化していた。対面キッチンなので、リビング側からのぞくと冷蔵庫は倒れていないようだった。しかし、キッチン収納棚の中のありとあらゆる皿が外に出たくてデモを起こしたようで、ガラスを壊して飛び出していた。

家族3人、立ち尽くしていた。しかし、やがて父が言う。「当分は電気もなにも戻らないだろうから。暗くなってきたら危ないし、ともかく着るものとラジオと食べ物と、必要なものを全部リビングに集めろ。」

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